附属自然教育園

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スタッフブログ

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7月31日(火) 小中陽太郎氏著 『跳べよ 源内』
石川です。

小説家小中陽太郎氏が『跳べよ 源内』という本を出されました(6月1日発行 平原社)。当園は江戸時代高松藩の下屋敷で、屋敷内の薬園は源内が関わっていた可能性があるそうです。小説の中でも関連する部分がいくつかあります。

15ページ。高松藩の御蔵番だった源内は家督を妹に婿を迎えて譲り、江戸に出てきました。ここでは、神田紺屋町の本草学者田村元雄、善之父子との出会いが描かれています。<2月のブログで私は、田村父子の御子孫である草野様からいただいた本に、田村父子が高松藩下屋敷で殿様と会ったことが書かれていると報告しました。>

25ページ。その7年後、源内は藩から目黒の下屋敷に呼ばれました。そして、源内は、家老から、かねて源内が願い出た辞職を認める、屋敷への立ち入りも認める、しかし、他家への士官は許さぬという沙汰を受けます。士官は許さぬという裁定に源内は途方に暮れました。小中氏は、源内はかつて植えた椎の若木の脇を通って薬草園に行き、「達者で暮らせよ」と言って虎の尾篠懸をそっと植えた、と書いています。

267ページ。源内が辰巳芸者おえんとともに高松藩下屋敷の薬草園を訪れます。源内は歩きながら、おえんにかつて虎の尾篠懸と椎の木を植えたと語っています。
ここで、小中氏は2008年9月、自然教育園でトラノオスズカケが59年ぶりに開花したことを紹介してくれました。そして、1933年、トラノオスズカケを発見した牧野富太郎が『植物研究雑誌』に記載した文章を引用しています。

閉塞感の漂う江戸時代、突き抜けた発想を持った風雲児平賀源内は面白い人物ですが、いろいろなことに手を出し、一人の統一した人格としては想像しにくい人物だと思います。小中氏は小説において、そのような源内が目の前にいるかのように活写されています。

トラノオスズカケの花は9月頃に咲くでしょう。

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7月20日(金) 雨がもたらすもの
ミソハギの紅紫色した花が咲き始めています。こんにちは大澤です。

最近、都心でも突然熱帯スコールのような激しい雨が降ることがあります。
こうした雨は動物や植物に恵みの雨となり貴重な水資源になっています。

一方で、この激しい雨が悪影響を及ぼす事もあります。
それは、園路に降り出した雨がたちまちの内にみず道を作り、園路の地面を削り栗石が現れ、園路の歩行環境を悪化させるからです。

園路上の土砂や小砂利は雨水と混ざり、低い土地の水生植物園の池に集中して流れ込み水底に溜まる原因になっています。
こうした事象に対処して昔から園路には雨水留め板を何カ所かに設けて雨水の流れの分散を試みています。

激しい雨の度にジョレン(砂利かきに使う農工具)やトンボレーキ(土や校庭のならしに使う農工具)などで継続した園路整備が必要であり、今でも試行錯誤の状況が続いています。


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7月13日(金) タヌキの赤ちゃんが現れました
石川です。梅雨明けが待たれます。

先月、お客様から寄せられたタヌキの写真を紹介しましたが、先週、職員が池に落ちているタヌキの赤ちゃんを発見しました。池の中の、一部水がない地面で情けなさそうにしていたそうで、親ダヌキは人と池から離れて様子をうかがっていたようです。写真の真ん中に赤ちゃんタヌキがいます。

この池は人工的に、地面から垂直に2mほど掘って作られたもので、園路からは50mほど離れた立入禁止の場所です。この池に落ちてしまっては、タヌキは這い出ることもできなければ、助けることもできません。雨で水位が上がれば溺死しますし、赤ちゃんであればカラスに狙われます。

そこで、職員が助けることにしました。写真は助けられた赤ちゃんタヌキです。この後、森に放しました。よちよちと親ダヌキの後をついていったそうです。

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7月11日(水) 冬虫夏草「クモタケ」
ニイニイゼミが鳴き始めました。こんにちは大澤です。

休憩所のササ刈りの最中に地面から珍しいものが伸びているのに気づきました。
それは地面と見分けがつかないトタテグモの巣の中から伸びたクモタケでした。

クモタケは巣にいるトタテグモに寄生するキノコの一種です。
クモを覆い尽くすと、綿棒のような柄が巣から伸びて、高さは2.5cmから5cm位に成長します。頭部には淡い紫色した粉状の胞子をつけます。

このように虫に寄生し、その後キノコになるものを冬虫夏草と呼ばれ、セミの幼虫に発生するセミタケなどが有名です。
本場中国では高級食材や漢方薬などとして珍重されています。


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7月4日(水) ノカンゾウが咲いています
石川です。

NHKラジオの「ラジオ深夜便」は毎日午後11時台から朝5時までの放送ですが、放送の最後に、その日の誕生日の花、花ことば、「きょうの一句」が紹介されます。昨年の9月19日、きょうの一句で有馬朗人先生の句が紹介された数時間後に有馬先生が園においでになって驚き、ブログに書きました。

きょうの花は「ノカンゾウ」、花ことばは「苦しみからの解放」、きょうの一句は「萱草が咲いてきれいな風が吹く」(大峯あきら)でした。園内の水生植物園や湿地ではオレンジ色のノカンゾウが咲いています。チダケサシ、イヌヌマトラノオ、クサフジなども咲いています。水生植物園の池では8羽のカルガモ親子も泳いでいました。池にいると、さわやかできれいな風が吹き、苦しみから解放してくれるような気がします。

ノカンゾウの若芽、若葉、花はいろいろな調理法で食べられるそうです。園内のものは天然記念物で採取することはできませんが、いつかどこかで採取して、つぼみの天ぷらをいただきたいものです。

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